静思の時を
旧5千円札の肖像で知られている新渡戸稲造は、日本より海外での評価の高い人物です。この新渡戸稲造が東京大学教養学部の前身、第一高等学校の校長時代に次のように言っています。「僕が北海道にいた頃は、清い小川の河畔を逍遥して、煌々たる名月と語ることもあり、またたく星々をいただいて心を休めたこともある。この天地に逍遥すると、浮き世を離れて天国に遊ぶの感がした。今日もこの月、この星が天空にかかり、清く澄んで物語りたげに見える。・・・中略・・・しかし、都会では周囲がざわるいているので、一日の内十分でも五分でもよい。世の中を去り、静かに沈黙することが必要である」と。
今、ほんとうに忙しい時代ですね。子どもも遊びではなく、塾や習い事でスケジュールがいっぱいです。交通機関のスピードアップで日帰り出張ができるようになったり、PCやインターネットの発達でいろいろなことができるようになりました。今までできなかったことができるようになり、実は忙しは増大したのです。
このような中で、新渡戸稲造が言うように、少しの間でも静かに心を落ち着ける時間が必要ですね。キリストも、忙しく働く弟子たちに対して『さあ、あなたがただけで、寂しいところへ行って、しばらく休みなさい』と言われました。人々の出入りが多くて、ゆっくり食事する時間さえなかったからです。またキリストご自身も、朝早く祈りの時間をもっておおられました。忙しさに流されない生活をするためににも、一日の内に「ゆっくりする時間」を持ちたいですね。