あなたにあるものを

　ある教育者が、自分自身にあるものに目を留め大切にすべきことを教えるのに、次のようなエピソードを書いていました。
　一人の少年が、片方の足にだけローラースケートをはいて、運動靴のままのもう一方で地面を蹴りながら楽しそうにやって来ました。本当に楽しそうでしたが、片足にしかローラースケートをはいていないのは変だなと思い、おせっかいな大人が、「君はどうして片方の足にしか、ローラースケートをはいてないんだね。」と尋ねました。
すると少年は目を輝かせて、「ぼくこれしか持ってないんです。だからこれで楽しんでいるんです」と答えました。片方だけもスケートがあることを楽しむか、それとも片方しかないことを悲しんで、平安と言うか、どちらでもできたのです。少年は自分の手にあるものから最大の喜びを引き出したのでした。
　さらに、「私たちは多くの場合、自分の持っているものから喜びを引き出す代わりに、他人の持っているものから悲しみと惨めさを引き出しています。他人の持ち物によって貧しくなり、他人の富のために自分のすべての宝が輝きを失うのです」と続けています。
　私たちは、しばしば自分の持っているものについては、あまり考えないで、自分に欠けているものを考えがちです。しかし、物であっても能力であっても、自分にあるものを最大限に使っていないことは確かなことではないでしょうか。今一度、自分にあるものを考えてみましょう。そしてそれを使ってみましょう。あの少年のように。